医療的ケア児とそのご家族の
日常、そして想い。
医療的ケア児とそのご家族に出会う機会は少なく、医療的ケア児とはどのような子どもたちなのか、またご家族がどのような日常を送られているのか、その実態を詳しく知る機会は多くはありません。
私たちは、「お薬の困りごと」 を通して医療的ケア児とそのご家族の現状を理解し、社会全体での認知と理解 を広げていきたいと考えています。またお話を伺う中で、薬に関する課題だけでなく、制度や支援体制など薬以外のさまざまな課題も見えてきました。こうした気づきも、医療的ケア児とそのご家族への理解を深める一助となれば幸いです。
Q 1日の流れを教えてください。
Q 外出や通院の際に気を付けていることや大変だと思うことはありますか?
外出先でも薬の服用時間を守るなど、なるべく「いつも通りの日常」を維持することを心がけています。医療的ケア児の中には変化に敏感な子どもも多く、 わずかな生活リズムの乱れが便秘や夜間の覚醒といった身体の不調につながり、 入院に至ることもあります。そのため、移動や休憩のタイミングを調整し、変化を最小限にして無理のない範囲で外出を楽しめるよう工夫しています。
大変なことの一つは、外出先でのおむつ交換場所が限られていることです。多目的トイレの設置は増えてきていますが、ユニバーサルシートが設置されている施設はまだ少ないです。そのため、車のトランクを利用して対応せざるを得ないことも多いのが現状です。
さらに、成長に伴い体が大きくなることで、医療的ケアに加えて介護の要素も大きくなってきます。入浴や移乗といった日常動作が徐々に困難になり、生活環境の整備など新たな課題が次々に生じています。
医療的ケア児を持つ家族にとって、何より大切なのは「いつも通りの日常を維持すること」です。その日常をより安心して過ごせるようにするためには、医療・介護・生活環境など多方面からの支援が必要となります。しかし、そのサポート体制や設備環境には地域差が大きく、都市部では実現できている支援が地方では十分に整っていないことも多いです。また、支える家族や周囲の人々にとっても、24時間体制でのケアや介護の負担は大きく、心身の疲労や孤立感を抱えやすい現実があります。 私たちには、家族が「当たり前の日常」を安心して送れるよう、地域を含めた社会全体で支えていく姿勢が求められています。
【気持ち】
Q お子さんと過ごす中で大変ではあるが幸せを感じる瞬間はどんな時ですか?
笑顔を見ることはもちろん、毎朝の「おはよう」や寝る前の「おやすみ」を言えることが本当に幸せです。
Q 医療的ケアが続く中で、気持ちの変化はありましたか?
最初は「なぜうちの子が…」という想いがあり、他の家庭と比べて孤独感や疎外感を感じていました。胃ろう*2造設を勧められた際も、決断できるまでに1年を要しました。
しかし、医療的ケアがあるからこそ家庭で過ごすことができ、日々笑顔で暮らせていると実感しています。医療的ケアは子どもが生きるために欠かせないものであり、子どもの一部であると受け止められるようになってからは、医療的ケアへの感謝の気持ちが強くなりました。
Q 自分の時間を取ることは難しいと思いますが、リフレッシュや気分転換はどうしていますか?
利用できるサービスを活用し、自分の時間を意識的に作るようにしています。自分自身のケアができているからこそ、家族にも思いやりを持って接することができると感じているからです。また、子どもに社会との繋がりを広げてあげたいという想いからも、時に子どもから離れる時間を持つことを大切にしています。
まとめ
医療的ケア児を日中に受け入れてくれる施設はまだ少なく、気軽な買い物や人と会うことも難しいです。保護者は「透明人間になったような孤独感」を抱くこともあったといいます。
会うことは難しくとも、同じ境遇を持つ仲間を見つけたい、不安や悩みを抱える人の助けになりたい、何より子どもの気持ちや将来を大切にし、安心して過ごせる環境を整えていきたいという強い思いから、医療的ケア児に関する情報発信は始まっていきました。情報発信は誰かの助けとなり、自分の心理的安心にも繋がっていったそうです。
医療的ケア児とその家族が孤立せず、社会の中でつながりを持てる環境づくりの重要性が改めて感じられます。
- *1 経腸栄養剤: 口から栄養を摂取できない場合に、鼻や胃ろう*2などのチューブを通して消化管に直接投与される栄養食品のこと。
- *2 胃ろう: 胃に直接管を通し、栄養や水分を注入するための処置。